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2019.12.30

健康食品と特許表示について

あっというまに年末ですね。小ネタですが、年内最後の投稿を。

景品表示法に基づく措置命令

本年(2019年)11月1日付けで消費者庁から、ある食品(いわゆる健康食品)について「景品表示法に違反する行為が認められた」として「措置命令」を行なったとのニュースリリースが出されています。

https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_191101_01.pdf

「違反する行為」の内容は、商品の品質などについて「一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し」た表示(宣伝広告などでの記載)をしていたとのことで、ニュースリリースによると、具体的には「本件商品を摂取するだけで、免疫力が高まり、疾病の治療又は予防の効果が得られるかのように示す表示をしていた」ことが該当するそうです。

「措置命令」というのも堅い表現ですが、今後こういう問題のある表示をしないよう再発防止に努めなさい、といった趣旨の内容になっています(本件では措置命令の時点で既に表示を修正済みだったようです)。

本件表示での特許に関する表現

さて、本稿で取り上げたいのは景品表示法そのものではなく、本件商品について、消費者庁が検討対象とした宣伝広告の中に、特許に関する説明が含まれていたことです。

ニュースリリースの4頁目以降に挙げられた「別紙」によれば、この商品の販売会社は、ウェブサイトや冊子・チラシの中で、以下のように説明しています:

・「◯◯大学と特許取得、免疫力を高める新成分」 

・「△△とは、◯◯大学と▽▽社が共同で特許を取得したブロッコリーの新成分です。」

・「免疫力を高める△△は、日本・米国・ 欧州で特許を取得」 

・「◯◯大学と特許を共同取得した特殊な製法によって抽出して凝縮することが、摂取するための唯一の方法です。」 

注:「△△」は成分名であり、かつ商品名でもあるのですが(ややこしいですね)、上記の説明では成分名として使われているようです。なお「▽▽社」は商品の販売会社です。

対象の特許

ニュースリリースには特許の番号が書かれていませんが、周辺情報によれば、対象となっているのは特許第5491082号です。発行された特許を見ると、たしかに◯◯大学と▽▽社(ともう1社)が共同で特許を出願し、権利として認められています。

登録された特許請求の範囲には「ブロッコリー由来の自然免疫機能活性化組成物の製造方法」(【請求項1】)の発明や、「自然免疫機能活性化組成物の製造方法を使用して得られたものであることを特徴とする、ブロッコリー由来の自然免疫機能活性化組成物」(【請求項7】)の発明が記載され、さらに【発明の効果】の欄を見ると「本発明によれば・・・生体内での自然免疫機能活性化作用が著しく増強されたこれまでにない高活性の自然免疫機能活性化組成物が製造できる」とあります。

それでは発明の裏付けとして「自然免疫機能活性化作用」をどうやって確認しているのかですが【実施例】の欄によれば昆虫(カイコ)を使った実験で作用を測定しています。

まとめと感想

いわゆる健康食品について特許の表示を制限する法規制などはなく、販売会社の立場からは「せっかく関連する特許権が取得できたのだから、それを使って少しでも商品のアピールを強化したい」と思いたくなる気持ちは、一般論としては分からなくもありません。

しかし一方で、生体(いきもの)への効果をうたった発明(本件では「自然免疫機能活性化組成物」等)について特許権が認められていることは、その技術を使った商品がヒトへの効果をたしかに示すこと(本件では「自然免疫機能を活性化すること」)まで保証するものではありません。特許権を認めるプロセスの中で、そこまでは想定されていないということです。

しかし、特許権を認めるプロセスの上記のような”お約束ごと”は、特許を仕事として扱う専門家にとっては当然でも、一般消費者にとっては決して当然ではありません。その点で、あえて一般消費者の誤解を招くことを狙っている、と受け取られかねないような形で特許を広告宣伝に利用することには、企業としては慎重の上にも慎重を期すべきだろうと思います。

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