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2022.10.26

日本版のアミカスブリーフ(第三者意見)

現在、知財高裁で、いわゆるアミカスブリーフの募集が行われています。アミカスブリーフは、元々米国で裁判所が(訴訟での重要なポイントについて)第三者の意見を広く募る手段として利用されてきたものです。日本では令和3年(2021年)の特許法の改正によって、同様な意見の募集を法律の根拠をもって行えるようになりました。現在進行中の意見募集は、改正された法律に基づく初めての運用ということになります。

募集の対象となっている事件(ドワンゴ対FC2他;東京地裁令和4年3月24日判決事件の控訴審)では、特許の請求項に記載された「システム」の発明が、サーバと複数の端末装置(パソコンなど)から構成される場合に、サーバが日本国外に設置されていても、なお国内で発明を実施していると扱うことができるか(つまり日本国特許の侵害になりうるか;ちなみに地裁判決の結論は「非侵害」)が争われており、これについての意見が求められています。

本来、国内で発明を実施しているといえるためには、請求項に記載された全ての構成が日本国内に存在する必要がありますが、これを厳密に要求すると、上記事件のような「システム」の発明では、サーバだけを国内から海外に移すことで(国内で端末装置を利用するユーザーへのサービス提供というビジネスの実態は何ら変わりがなくても)簡単に特許を回避することが出来てしまいます。国境を越えてネットでつながった世界でも、特許の保護は国ごとに成立するのが法律のルールですが、両者の折り合いをどうつけるか、という極めて現代的な課題といえそうです。

日本版のアミカスブリーフは、第三者が裁判所に提出したものを直ちに裁判所が考慮するわけではなく、(特定のブリーフについて)自分達の主張に都合が良いと考えた当事者(原告または被告)が裁判資料として改めて裁判所に提出する、という少々ややこしい段取りになっています。そのため、いずれの当事者も裁判資料として提出しなかったブリーフは、たとえ興味深い指摘などを含んでいたとしても、外部の人間の目に触れる機会のないまま”お蔵入り”することになりそうです。この点は、ちょっと残念な気がします。

参考:第三者意見募集を実施している事件について(知財高裁HP)

https://www.ip.courts.go.jp/vc-files/ip/2022/boshuuyoukou_n_n.pdf

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