1)特許行政年次報告書から – その1

ちょうど1ヶ月前の7月12日に、2019年版 の「特許行政年次報告書」が公表されています(電子ブック版は7月30日に掲載)。この報告書は、日本国内そして海外の知財をめぐる状況を把握するのに役立つ情報を多く含み、筆者はいつも目を通すのを楽しみにしています。以下、個人的に注目したデータをいくつか挙げてみることにします。

特許査定率の高止まりはいつまで続く

実務者にとって特許査定率(審査請求された特許出願のうち登録に至るものがどのくらいの割合か)は大いに気になる値です。2018年は75.3%、これで3年連続で約75%となりました。つまり4件のうち3件が審査段階で登録されているわけです。2019年版に表で示された(本誌3頁)データは2013年までの6年分ですが、過去の報告書も参照してもう少しさかのぼってみると次のようになります:

2018年 75.3%

2017年 74.6%

2016年 75.8%

2015年 71.5%

2014年 69.3%

2013年 69.8%

2012年 66.8%

2011年 60.5%

2010年 54.9%

2009年 50.2%

この9年間で、じつに25%も特許査定率が上乗せされたことが分かります。驚くべき上昇率といえそうです・・。一方向に振れすぎた振り子がいずれ逆向きに戻り出すように、年次の特許査定率も遠からず下降線を描き始めるのでしょうか? 少なくともその可能性は大いにありうることを実務者は自覚しておくべきだろうと思います。

日本の特許査定率は主要国で最も高い

報告書には、主要五庁(日本、米国、欧州、韓国、中国の特許庁)それぞれの特許査定率を比較したグラフも掲載されています(本誌11頁;なおこのグラフで今回初めて中国特許庁の特許査定率が公開されたことも注目点です)。こちらは2017年までのデータですが、2015年から2017年まで3年続けて、五庁の中で日本の特許査定率が最も高いという結果になっています。既に述べた日本の2018年が75.3%という値から想像するに、おそらくは4年連続で五庁の中で最も高い特許査定率となっていることでしょう。

特許査定率は一概に高い方がよいとか低い方がよいとかいい切れるものではありません。少なくとも出願人にとって、特許査定率が短期間に大きく変動することは望ましくなく、また、国・地域ごとの特許査定率が大きく乖離する状況も望ましくありません。ある国の特許査定率が高いことは、必ずしもストレートにその国の特許制度の魅力にはつながりません。主要国の特許査定率がそれぞれ安定した推移をたどりつつ、全体として収束に向かうことを、期待を込めつつ今後も見守りたいと思います。

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