2)特許行政年次報告書から – その2

今回は、報告書からうかがえる中国知財の状況にふれてみたいと思います。

中国専利(特・実・意)出願の増加トレンド

よく知られているように中国の知財制度では特許・実用新案・意匠をひとまとめにして「専利」といいます。特許・実用新案・意匠それぞれの出願数が(商標の出願数ともども)圧倒的に世界一多いことも、もはや常識レベルになっています。筆者が注目するのは、出願数を権利の種類(特許・実用新案・意匠)ごとに見たときの伸び率がどうかです。

最新の2018年の出願数を、4年前の2014年の出願数と比較してみると次のとおり(出願数は四捨五入して万件単位で表示)、権利の種類ごとに伸び率に大きな違いがあることが分かります。:

(中国特許出願)

2018年 154万件
2014年  93万件
 → 4年前からの伸び率=166%

(中国実用新案登録出願)

2018年 207万件
2014年  87万件
 → 4年前からの伸び率=238%

(中国意匠登録出願)

2018年  71万件
2014年  56万件
 → 4年前からの伸び率=126%

日本でもかつて実用新案登録出願(実体審査を伴う旧制度下の出願)の数が特許出願の数を上回る時代が長く続きましたが、1980年代に入ってから実用新案に対する特許の比率が年々増え続け、その傾向が加速されつつ1993(平成5)年末での旧実用新案制度の廃止に至りました(報告書の本誌41頁のグラフを参照)。実用新案登録出願が減少した理由は、旧制度の廃止当時、我が国の技術水準の向上によるものと説明されていました。

中国においても、いずれかつての日本のように特許が実用新案を上回るペースで出願数を伸ばすようになるのか、それとも今後も日本とは異なる推移をたどるのか(このまま実用新案の出願がハイペースで増え続けますます実用新案大国になっていく等)、興味深いところです。

日本企業は中国実用新案への熱が冷めたか

ちなみに、日本人すなわち日本国籍の出願人による中国実用新案登録出願の数は、2010年の546件から2013年には3048件と急激に増加しましたが(それでも中国全体の件数に対しては微々たるものですが)、その後は減少に転じ、2017年は2070件とピーク時の約3分の2に止まっています。そういえば中国実用新案権の侵害を理由としてフランス企業の現地子会社に巨額の損害賠償が命じられ話題になった事件は地裁判決が2007年、高裁で和解が成立し支払額が確定したのが2009年でした。あれから10年近く経ち、いったんは(それなりに)中国実用新案に注目した日本企業の熱ももはや冷めてしまったということでしょうか。

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