日経ビジネス「知財」特集にふれて

今月に入って格別、新型ウイルス感染のおそれに加えて、確定申告が間に合わない(かもしれない)おそれと向き合ってきましたが(汗)、2つ目の方からは先週なんとか解放されました。1つ目の方からも早く解放されたいものです。

さて、少し前の日経ビジネス(4月6日号)では「種は社内にある イノベーションの新作法」と題する特集で知財が大きく取り上げられていました。最初に目を通したとき、個々の項目は知財関係者には周知の内容だったり、そうでなくても丁寧にかみ砕いて記載されていたりで、すんなりと一読できたのですが、一方で、どこか引っかかるというか、モヤモヤが残るところがありました。以下では、このモヤモヤについて書いてみようと思います。

改めて考えると(考えるほどでもなく)「種は社内にある イノベーションの新作法」という特集の標題には「知財」とは一言も出てきません。もっと言えば、特集の最初のページの、「・・・『イノベーションの新作法』を取材した。」で終わるイントロ的な段落にも「知財」とは一言もありません。しかし、特集本文を締める最終段落の見出しが「知財経営に転換せよ」であるように、内容としては「知財(の扱い)がイノベーションの鍵である」という認識で記載されていることは明らかで、この、いわば”入口”と”出口”のギャップが、モヤモヤの元だったのかなと後から気づきました。

なぜ特集をこのような構成としたのか? 筆者の勝手な想像ですが、この記事は、知財関係者よりも、むしろ「日頃知財に関心の高くないビジネスリーダー」をターゲット層として、そういう読者に注目してほしい意図で編集されたものではないのでしょうか。つまり、標題に「知財」と書いたらそもそも手に取ってくれないような読者(でも本来は知財の役割を分かってほしい立場にいる読者)を特集のページまで誘導することを狙って、あえてこうしたのではないでしょうか。

いうまでもなく、知財をどう扱うかの戦略(知財戦略)は、イノベーションをどう進めるかの戦略(開発戦略)と密接に関わるものではありますが、知財戦略が開発戦略の全てをなすものではありません。同じことは、知財戦略の一手法であるオープン&クローズ戦略と、技術戦略の一手法であるオープンイノベーションとの関係についても当てはまります。知財という、開発戦略の一つの要素(に過ぎないが重要な要素であるもの)にあえてフォーカスを絞ることで、イノベーションの活性化を促すことが本特集の試みであるとしたら、その意図が少しでも多くの想定ターゲット層に届いたことを期待したいものです。

イノベーションのために知財を重視せよという議論においても、「知財戦略」を重視することと、「知財部門」を重視することには微妙な違いがあります。知財戦略を強化することは企業活動の目標となりうるわけですが、その目標のための手段として知財部門を強化することはあっても、知財部門を強化すること自体が目標となるものではないからです。(例えば、知財分析が重要であるとしても、分析機能を知財部門が持たねばならないとは限らず、企業によっては企画部門などで担当して上手くいくこともありうるでしょう。)両者の違いを知財関係者がよく意識しておくことが、「知財経営」というスローガンを誤解なく発信し、知財重視のかけ声を正しく伝達するために重要であるように思います。

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