健康食品と特許表示について

あっというまに年末ですね。小ネタですが、年内最後の投稿を。

景品表示法に基づく措置命令

本年(2019年)11月1日付けで消費者庁から、ある食品(いわゆる健康食品)について「景品表示法に違反する行為が認められた」として「措置命令」を行なったとのニュースリリースが出されています。

https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_191101_01.pdf

「違反する行為」の内容は、商品の品質などについて「一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し」た表示(宣伝広告などでの記載)をしていたとのことで、ニュースリリースによると、具体的には「本件商品を摂取するだけで、免疫力が高まり、疾病の治療又は予防の効果が得られるかのように示す表示をしていた」ことが該当するそうです。

「措置命令」というのも堅い表現ですが、今後こういう問題のある表示をしないよう再発防止に努めなさい、といった趣旨の内容になっています(本件では措置命令の時点で既に表示を修正済みだったようです)。

本件表示での特許に関する表現

さて、本稿で取り上げたいのは景品表示法そのものではなく、本件商品について、消費者庁が検討対象とした宣伝広告の中に、特許に関する説明が含まれていたことです。

ニュースリリースの4頁目以降に挙げられた「別紙」によれば、この商品の販売会社は、ウェブサイトや冊子・チラシの中で、以下のように説明しています:

・「◯◯大学と特許取得、免疫力を高める新成分」 

・「△△とは、◯◯大学と▽▽社が共同で特許を取得したブロッコリーの新成分です。」

・「免疫力を高める△△は、日本・米国・ 欧州で特許を取得」 

・「◯◯大学と特許を共同取得した特殊な製法によって抽出して凝縮することが、摂取するための唯一の方法です。」 

注:「△△」は成分名であり、かつ商品名でもあるのですが(ややこしいですね)、上記の説明では成分名として使われているようです。なお「▽▽社」は商品の販売会社です。

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3)特許行政年次報告書から – その3

筆者の夏バテもあり(汗)すっかり更新が滞ってしまいましたが、標題の報告書からもう一点だけ、わが国の異議申立にふれておきたいと思います。

異議申立ての妥当な件数はどの程度か

2018年に特許登録された件数は194,525件です(報告書の本誌3頁)。他方、2018年に異議申立てされた件数は、権利単位で1,075件です(同39頁)。これらから「異議申立率」(※)を計算すると、約0.6%になります。

※ 特許登録から異議申立てまでの間にタイムラグがあるので、上記の登録件数と申立件数は厳密には対応していませんが、ここではおよその傾向をみるために計算しています。

ちなみに、2017年、2016年のデータについて同様に計算しても、それぞれ約0.6%です。つまり現行の異議申立制度では、登録された特許およそ180件当たり1件の異議申立てがされる状況が続いているわけです。

比較の対象として、欧州の異議申立て状況をみてみましょう。欧州特許庁(EPO)がウェブで公開しているアニュアルレポート2018年版によれば、異議申立率(opposition rate)は3.2%とされています。登録された特許およそ30件当たり1件の異議申立てです。日本に比べるとかなり多いです。

異議申立制度の利用状況として、どちらが、しっくりくる数値でしょうか・・。

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2)特許行政年次報告書から – その2

今回は、報告書からうかがえる中国知財の状況にふれてみたいと思います。

中国専利(特・実・意)出願の増加トレンド

よく知られているように中国の知財制度では特許・実用新案・意匠をひとまとめにして「専利」といいます。特許・実用新案・意匠それぞれの出願数が(商標の出願数ともども)圧倒的に世界一多いことも、もはや常識レベルになっています。筆者が注目するのは、出願数を権利の種類(特許・実用新案・意匠)ごとに見たときの伸び率がどうかです。

最新の2018年の出願数を、4年前の2014年の出願数と比較してみると次のとおり(出願数は四捨五入して万件単位で表示)、権利の種類ごとに伸び率に大きな違いがあることが分かります。:

(中国特許出願)

2018年 154万件
2014年  93万件
 → 4年前からの伸び率=166%

(中国実用新案登録出願)

2018年 207万件
2014年  87万件
 → 4年前からの伸び率=238%

(中国意匠登録出願)

2018年  71万件
2014年  56万件
 → 4年前からの伸び率=126%

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1)特許行政年次報告書から – その1

ちょうど1ヶ月前の7月12日に、2019年版 の「特許行政年次報告書」が公表されています(電子ブック版は7月30日に掲載)。この報告書は、日本国内そして海外の知財をめぐる状況を把握するのに役立つ情報を多く含み、筆者はいつも目を通すのを楽しみにしています。以下、個人的に注目したデータをいくつか挙げてみることにします。

特許査定率の高止まりはいつまで続く

実務者にとって特許査定率(審査請求された特許出願のうち登録に至るものがどのくらいの割合か)は大いに気になる値です。2018年は75.3%、これで3年連続で約75%となりました。つまり4件のうち3件が審査段階で登録されているわけです。2019年版に表で示された(本誌3頁)データは2013年までの6年分ですが、過去の報告書も参照してもう少しさかのぼってみると次のようになります:

2018年 75.3%

2017年 74.6%

2016年 75.8%

2015年 71.5%

2014年 69.3%

2013年 69.8%

2012年 66.8%

2011年 60.5%

2010年 54.9%

2009年 50.2%

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