TOPICS & BLOG

トピックス&ブログ

2024.06.18

化学組成物発明の進歩性 -「衣料用洗浄剤組成物」事件 知財高裁判決から –

先月出された知財高裁判決(令和5年(行ケ)第10098号;令和6年5月14日判決)では「衣料用洗浄剤組成物」の発明の進歩性が争点となりました。

無効審判の請求に対して特許庁が進歩性ありとして(他の無効理由も退けて)特許を維持した審決を不服として、無効審判請求人が審決の取消を求めた訴訟の判決です。

日用品分野での大手企業同士の争いが判決として世に出た、かなり珍しい事例といえそうです。

対象特許(特許第6718777号)は、組成物の成分と含有量が特定された、いわば典型的な組成物の発明で、主たる引用発明(甲1発明)との三つの相違点(相違点1~3)をどう評価するかが焦点でした。

特許庁の審決では、相違点1~3いずれについても、その相違を解消することは「当業者が容易になし得ることではない」との判断が示されていました。

これに対して、今回の判決では、相違点1~3いずれについても「当業者が容易に想到することができたもの」であるとし、更に本件発明の効果は「当業者が予測することができた範囲を超える顕著なもの」とは認められないとして、進歩性を認めた審決を取り消しています。

結果として、特許庁の審決での判断は、裁判所によって全否定された形となりました。

現在「有効」なものとして成立している化学組成物の特許であっても、今回の判決と同様なレベルの厳しさをもって精査された場合「無効」と判断されうるものは少なくないように思います。

いうまでもなく、その影響は、今回無効審判を受けた側(被請求人)だけでなく、無効審判をした側(請求人)を含む業界全体に及ぶことになるでしょう。

menu