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2021.07.26

PCT国際出願、インドの国際調査

あまり目立たない記事ですが、特許庁のホームページに、7月1日付けで「国際出願関係手数料改定のお知らせ」が掲載されています。国際調査の手数料について、EPの手数料が値上げになり、加えて、新たにインド特許庁での国際調査の手数料が設けられたという内容です。

https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_tesuukaitei.html

日本の特許庁にPCT国際出願を提出したら、国際調査も日本の特許庁に任せるのが普通と思われそうですが、他の選択肢もあります。PCT国際出願の書類(請求の範囲、明細書)を英語で作成した場合には、これまでも、国際調査を日本の特許庁以外に、欧州特許庁またはシンガポール知的財産庁に任せることができました。今回この国際調査の選択肢にインド特許庁が追加されたことになります。

注目すべきは国際調査の手数料です。以下にリストします:

インド特許庁の手数料は「ゼロが1つ足りないのでは?」と目をこすりたくなる額ですが、間違いではありません。出願人が法人の場合の額でさえ、人件費が賄えるのか?と心配になるぐらいの「激安」価格です。この額で請け負う国際調査の品質はどうなのか、気になるところですが、インドには特許調査のサービスを提供する民間企業も多く、一定以上の特許調査スキルを持った人材の層はかなり厚いと思われますので、十分な品質の国際調査が得られても少しもおかしくはないでしょう。

「そうは言っても、そもそも英語で国際出願すると初めから翻訳費用がかかってしまう。国際調査の結果を見て、権利が取れる見込みを確認できてから、翻訳作業を始められるのが国際出願のメリットではないのか?」と疑問を持たれる向きもあるかもしれません。確かに、翻訳のタイミングを遅らせることを重視して日本語で国際出願するユーザーは少なくないでしょう。

ただ一方で「(取れる権利の広狭はともかく)何としてでも特許権を確保したい」という意図でなされるような”虎の子”の国際出願では、国際調査の結果が多少厳しい内容であったとしても、結局は権利化の手続きを進めることになると考えられます。そういう、重要度の高い国際出願であれば、出願作成の段階で翻訳費用も投入して英語で国際出願することも合理的な判断ではないかと思います。

知財活動の国際化は一面において、各国特許庁間の競争をも促しているといえそうです。そういう観点で、今回のインド特許庁の国際調査は現実にどのくらいインパクトを与えるのか、今後の日本発のPCT国際出願で実際にどの程度利用されるのか、興味が持たれるところです。

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